one's future
一瞬の事だった。
何かが来る、そう感じた時には既に手遅れだった。
木々の隙間から伸びた攻撃は、まるでその時を待ち望んでいたかのように真っ直ぐ一つの場所を目掛けて向かい、気付いた時には目の前を通過していた。
咄嗟に口にした呪文は殆ど無意識に近く、ただ間に合えさえすればいいと、それだけを、まるで願うように何度も繰り返し、そして口早に言葉を繋ぎ、腕を伸ばしていた。
掌の先から揺らめいて伸びた輝かしいエメラルド。
盾のように円を描いて放たれた光。
しかしそれは完全に光り輝く前に、ガラスが割れる時の高音と共に――――砕け散った。
代わりに目の前に広がったのは、美しいまでに赤く輝いた、
――――真っ赤な鮮血。
誰かが叫んだ、『リノア』と。
その叫び声が自分のものであったと気付いたのは、ずっと後になってからだった。